2018年のボジョレー・ヌーヴォー情報をお届けいたします
写真は、ドメーヌ・オヤマダ/BOW!の西山デラウェアをプレス機に投入しているシーンです。
ペイザナでは、今年も無事にデラウェアの収穫を迎えることができました。
しかしここまでを振り返ってみると、なんとも変な天候でした。
まず春の高温。これによってその後の生育ステージが全て早くなりました。
スタートの生育が早くても、収穫に向かうにつれ例年のペースに戻っていくのが通常ですが、
今年は発芽、誘引、着色とすべて10日前後早くなっています。
次に雨の降り方。ここ数年では、春先は大して降らず、梅雨入りしても大して降らず、
梅雨後半に雨が少し強く降ってさっさと明け、秋に一番降る、という傾向だったように思います。
ですが今年は、梅雨前に連日雨が降りベト病に対して身構えていたところ、梅雨入りすると全く降らず、あっという間に梅雨明けし、一旦安心したところで強い雨が短いスパンで降るという、防除のタイミングを計るのが難しい降り方でした。
このように天候に振り回された年ですが、ペイザナのデラウェアはほぼ何の問題もない、美しいブドウを収穫することができました。
デラウェアに関しては今年は「良年」と言えるでしょう。
結果として、8月までの雨量は例年よりも少なく、台風の直撃を受けなかったこともあり、
防除回数は例年より少なくすみ、収量も例年通りあって、最も重要な熟度は申し分ありません。
この後の収穫も、例年より前倒しで予定しています。
山梨は9月末の日向ヴィニフェラ赤で最後、全体では洗馬の10月下旬の収穫で全てのブドウを切り終えます。
連続して発生している台風が気がかりですが、あと1ヶ月何事もなく乗り切れば今年はかなり良い品質のブドウが期待できそうです。
今月はなんと新規生産者を2人同時にリリースです!
1人目はアルザスの「ジャン・マルク・ドレイヤー(写真左)」
ストラスブールのボージュ山脈の山麓に向かって30 kmほど南西に下ったロスハイム村にドレイヤーのドメーヌはあります。1830年から続く由緒あるドレイヤー家の4代目にあたるジャン・マルクは、2000年25歳の時、父の定年が近づいたことを機に実家に戻り、農業開業責任者資格(BPREA)を取るためにオベルネ村の農業学校に3年間通いつつ以前から興味のあったビオディナミをパトリック・メイエのところで学び、2004年に自身のドメーヌ立ち上げとともに、6 haあった父の畑をビオディナミに転換しました。醸造についてはパトリック・メイエの影響もあり、2009年にピノノワールで最初のSO2無添加のワインを造り、2013年に全てのワインをSO2無添加にシフト。
また現在では「マセラシオンのジャン・マルク」と認識されるほどで、今回も6種類のうち4種類(+赤1種)がマセラシオンを施しています。
骨格とボディを、そしてブドウと大地のエナジーをぐっと感じながらも、とてもピュアで伸びやかな味わいです♪
アルザス・ピノグリ 《ウェッグ》2015
マセラシオンなし/600 Lの古樽で24ヶ月熟成
「ウェッグ」はアルザス語で「道」と言う意味があり、巡礼の道が畑に隣接していることから命名
アルザス・シルヴァネール 《オリジン》2016
ファイバータンクで15日マセラシオン/500 Lの古樽で12ヶ月熟成
「オリジン」はワイン造りの原点ともいえるマセラシオンの醸造方法に由来
アルザス・リースリング 《オリジン》2016
ファイバータンクで10日マセラシオン/20 hLのフードル(大樽)で12ヶ月
「オリジン」はワイン造りの原点ともいえるマセラシオンの醸造方法に由来
アルザス《ピンク・ポン》2016
ピノノワール50%、ピノグリ50%
ファイバータンクで10日マセラシオン/600Lの古樽で12ヶ月
「ピンク・ポン」はPinot Noir、Pinot Grisの頭文字の「P」とロゼのPinkを掛けて掛けている
アルザス・ピノノワール《 アニマ》2016
ファイバータンクで15日マセラシオン/225 Lの古樽で12ヶ月
ラテン語で「生命」「魂」の意味、キリスト教では「大地の匂い」という意味
アルザス《フィステラ》
ゲヴュルツトラミネール50%、ピノグリ50%
ファイバータンクで20日マセラシオン/18 hLのフードル(大樽)で12ヶ月
「フィステラ」は巡礼地コンポステーラの最西端の地名で、この世の果て=一度仕込んだら最後まで!という意味を込めて命名
ジャン・マルクはこれまで地元の消費者と、地元のスーパーにワインを瓶詰め前に大きなロットで販売をしていましたが、今回友人であるボエムのパトリックの推薦で、弊社との取引を決定し、初めて輸出することになりました。今まで露出がなかっただけで、ルーキーというわけではなく、畑での十分なキャリアとワイン造りに対する確固たる信念、そして理想のワインを実現できる技術と環境をすでに備え持っています。まだ出会って間もないですが、ジャン・マルクの真面目で温かい人間性、彼の持つ平穏と熱が同居するオーラにすでに安心感や信頼感さえあります。
ジャン・マルク・ドレイヤーとの最高の出会いに気持ちが高ぶっています。
今後の新しいキュヴェや、高い評価の2017年もぜひご期待ください!
2人目はボジョレーの「アレックス・フォワヤール(写真右)」
そしてそして、ついにフォワヤール家の長男アレックスのワインがデビューです!
何てったってあのジャン・フォワヤールの息子ですから、それだけで期待も注目度も高いですね☆
アレックスはまだ若干26歳。同世代にはケヴィン・デコンブ、少し上にシャルリー・テヴネ、ジュール・メトラなど、ボジョレーのヴァンナチュール界は着々と次世代にバトンを渡す準備が進められているようです。ただ、彼らの共通点はPère & Filsではく、自らが独立したドメーヌを経営しているところです。無論親子であっても自分の造りたいワインはイコールではなく、それ故の独立でもありますが、その自分が造りたいワインを自分で決断し経験を積むことが重要だと思いますし、何より若いうちに経験できることが本当に素晴らしいと思います。親の厳しさとやさしさと、息子のチャレンジ精神とで、フランスワインの伝統は継承されて行くのですね。しかし子供たちが物心ついた時からワインを造るつもりだったって、やっぱりすごい・・!
さて今回ブルイィ2016、コート・ド・ブルイィ2016の2種類がリリースです!
アレックスの造るワインは「エレガントな果実味と深みのある味わい」のジャンのワイン造りがベースになっていますが、さらにブドウの持つフィネスや洗練された旨味を引き出すことが彼のワインの理想型のようです。
今回リリースされるブルイィ、コート・ド・ブルイィともに産地的にはジャンのモルゴンに比べ、より軽やかでみずみずしさが魅力なワインで、早くからフィネスを感じられる味わいです。その中でも今回のブルイィはタンニンがやや強く粗いため樽をかけ、迫力のある味わいに仕上がっています。一方コート・ド・ブルイィはセメント・タンクのみで仕込んでおり、より華やかに仕上がっています♪アレックスのイメージは後者に感じますが、2017年は仕込を逆にしているそうで、あくまでその年々ブドウの状況にあった丁寧な仕込を行っています。
しかしジャンもそうですが、「ピエ・ド・キューヴ(事前にタンク内に熟したブドウを敷いて醗酵を促す準備)」と、「仕込み前に保冷室でブドウ10℃まで冷やす」この手間が、きれいで健全なジュースにを生み出し、それがフォワヤール家のエレガンス・ワインの元になっていると感じています。
ファースト・リリースから脱帽レベル!
アレックス・フォワヤールをぜひお見逃しなく~!!
写真は6月下旬の日向の様子です。
こちらの日向の畑は、まわりが林に囲まれているため動物や虫が多く、それらへの対策は必要ですが、見事に南東を向いた斜面で日中は日当たりが良く、夕方の日は当たりにくいという、立地的に優れた畑で、ブドウは熟しつつも酸を確保できます。
品種は、ムールヴェードル、シラー、タナ、シュナン、カベルネフラン、プチマンサンを主体に、サンジョヴェーゼ、フルミント、サヴァニャン、トゥルソー、バルベーラなども少しずつ植わっています。
まだ山梨での適性が判断されていない品種も多く植わっており、実験的な意味でも大きな役割が期待される畑です。
さて、関東甲信地方では6/29に梅雨明けが発表されました。これは2017年が7/19、2016年が7/28に梅雨明けだったことを考えると異常に早く、観測史上初の出来事です。
これで春からの生育の早い傾向も続くこととなり、現時点では例年よりも早い収穫が見込まれます。
これ程までに例年と違う気象条件となると、例年通りの対応という訳にはいかず、生産者の経験と感覚が重要となってきます。
何はともあれ新梢管理のピークは乗り越えました。
8月の中旬にはデラウェアの収穫がスタートしま す。
このまま青空が続き、無事収穫を迎えられることを祈ります。
■旨安ワイン(予備軍) P41■
ピエール=オリヴィエ・ボノーム/トゥーレーヌ・ヴァンクゥール・ヴァンキュ・ブラン2017
■ナチュラルワイン P107~108■
フランク・マサール/テラ・アルタ エル・マゴ2014
ジャン・フォワヤール/ボージョレ・アリザリーヌ2016
■ティスティングレヴュー 番外編 P114~118■
アレックス・フォワヤール/ブルイィ2016
ご紹介者:亀屋商店 猪俣光司様
ジャン・マルク・ドレイヤー/ピンク・ポン2016
ご紹介者:ロックス・オフ 若林康史様