写真はアルボワ・ピュピランの名家、ボールナールのダイニングルームの暖炉です。
カーヴ兼住居は1584年建築(なんと築436年!!)ですが、この暖炉はフィリップの祖父の代から使われており、冬の長いジュラにおいて、暖を取ることはもちろん、料理を温める、焼くなど、ボールナール家の生活に欠かせない大事な役割を担っています。
暖炉上部にはブドウと人物の「ボールナール家の家紋」が彫られています。
そこは「キツネ」が欲しいところですが(笑)、ヴィニョロンらしく家紋は「ブドウ」なんですね。
そしてこの暖炉にはフィリップ友人作の仕掛けが施されており、右側の黒い歯車を1回まわすと石の重りでほぼ正確に1分かけて肉がゆっくりひと回りするという優れもの!このローテクとハイテクが融合した「半自動バーベキュー装置付き暖炉」を使って、フィリップが客人をもてなすのがお決まりのパターンとなっています♪
シンプルに時間を掛けて焼き上げるシャロレー牛のコート・ド・ブッフなんかは言うまでもなく絶品で、
一緒に飲むボールナールのトゥルソーやピノノワールは、それはもう格別の美味しさです!!
迎え入れる客人を思い料理を準備し、暖炉に薪をくべ火を灯す。
フィリップのおもてなしには生きた温かさがあり、体だけではなく心まで温まる気持ちになります。
さて、いつも陽気で若々しいフィリップも齢63歳になり、現在はカーヴでのクライアント対応やトニーの代打としてサロンに参加など裏方の仕事が主になっており、表舞台はトニーに一任しています。とはいえ畑作業のヘルプもすれば、醸造のアドバイスもしており、常にトニーを支えボールナールの要所を担っています。今回リリースの2015、2016年あたりはトニーとフィリップの共作となっていますが、それ以降は徐々にトニー主体のワインにシフトしていきます。
ちなみにPhillippe Bornardはここ1~2年前からラベル上はEARL(有限会社) Bornardに変更されておりますが、これまで同様フィリップの畑のブドウで造られるワインはEARL Bornard、トニーの畑はTony BORNARDとして既存のラベルデザインを使用しリリースされる予定です。
またリリースに関しては、ブランドごとではなくワインのポテンシャルやコンディションを見極め決定されるため、今後ボールナール(フィリップ)とトニーが混在してリリースされる可能性もあります。
今回4種類リリースとなります。
ル・ブラン・ド・ラ・ルージュ2016
シャルドネ/アルコール12.9%
SO2無添加、ノンフィルター
2010年以来久々のリリース!
収穫日は10月7日。収量は45hl/haと久々の豊作!
昨今の温暖化により、ブドウの完熟よりも酸の確保の方が難しくなる中、
畑が北向きに位置するブラン・ド・ラ・ルージュは酸が残しやすい貴重な畑。
照りのある果実感とまとまりのある酸、ほのかにスパイシーでビターな印象。
凝縮した旨味とボリュームある芳醇なエキスと長く続く余韻がポテンシャルを物語っている。
ヴィヴィッドで非常に懐が深い♪
ポワン・バール2015
プルサール/アルコール12.9%
SO2無添加、ノンフィルター
2015年は、ブドウが早熟でしっかりと完熟した当たり年!
収穫日は9月14日。収量は33hL/ha。
ブドウを除梗しタンクに入れ、タンクの中に中蓋をかまし果房を常にワインに漬けた状態で30日間マセラシオン!中蓋は抽出を良くするだけでなく、果房のボラティル汚染防止も兼ねている。
果実感はおとなしく、シンプルな飲み口。ボリューム感があり、酸はとても柔らかい。
柿渋やカテキンのような収斂した渋みと、スパイシーさに加えオレンジリキュールのような苦みが広がり、余韻まで長く続く。
ル・ガルド・コー2015
トゥルソー/アルコール12.8%
SO2は樽からスーティラージュ時に20㎎/L添加、ノンフィルター
2015年は、ブドウが早熟でしっかりと完熟した当たり年!
ポテンシャルの高いブドウの全てを引き出すために、ルモンタージュやピジャージュをしっかりと行い、
さらにマセラシオンの期間も45日と長く、長熟を予感させる仕上がり。
透明感と野趣を感じる果実味。アルコールのインパクトの中に、落ち着きのある酸と緻密なタンニンが溶け込んでおり、余韻にスパイス感が続く。デティールが細かく、終始艶やかで色っぽい。
レ・ド・メモワール2016
プルサール/アルコール12.9%
SO2無添加、ノンフィルター
収穫日は9月30日。
2016年は、途中ミルデューの猛威が遭ったにもかかわらず、収量は45hL/haと豊作。
90%は除梗、10%全房ブドウを使用しマセラシオンカルボニックをおこない華やかさを少しだけ加味している。
例年より明るく華やかなフレーバーがあり、落ち着きのある細かい酸と、上品なタンニンが緻密で色気のある構成を作り上げている。ボリュームは控えめ。フィニッシュはみずみずしく伸びやか。
まだフィリップが完全に引退したわけではありませんが、
主体がトニーへと変わり、いよいよボールナール家の世代交代がはじまりました。
フィリップはデビューの2005年VTからブドウの品質とイメージによってワイン造りを柔軟に変化させてきました。
特に赤ワインに関しては、ファーストリリースの抽出感と骨格のある古典的な超熟スタイルからはじまり、みずみずしい果実感が前面に出たマセラシオンカルボニック、ヴィヴィッドなロングマセラシオンと同じ区画であってもブドウのポテンシャルによって造り変え、また熟成もフードル、小樽、ステンレスと使い分けてきました。(近年試みたアンフォラ、クヴェヴリ、ジャーの特性の理解については、今後トニーに委ねられることになりそうです)
これらフィリップが造ったワインがトニーの今後の道しるべとなり、彼を導いてくれることでしょう。
(今までのすべてのワインがフィリップからトニーに対するプレゼントなのかと思えたりもします。元々一緒にボールナールを始める予定でしたから。)
フィリップが造った「テロワールが語りかけるワイン」をトニーが今後どのように表現していくのか
楽しみでなりません♪トニーが生み出す新たなボールナールの世界を今後ぜひご注目ください!
しかし豊作であっても他の産地ほどではなく、また続かないのがジュラの産地です。
特に近年難しくなってきていますが、せめて3年に1度くらいは適正収量がとれることを願ってやみません。